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交通問題調査特別委員会中間報告書

ページ番号:513895166

更新日:2006年10月26日

平成18年5月29日
 
1 調査事件
(1)京浜急行連続立体交差事業の推進について
(2)交通網整備等に関する対策について
 
2 中間報告
 本委員会は、京浜急行連続立体交差事業、蒲蒲線整備事業の推進及び、区民にとって安全で快適な生活基盤としての交通体系の整備に向けて、調査研究を行うために平成15年に設置され、調査・研究を行ってきた。
 ここに、これまでの調査結果について報告する。
 
(1)京浜急行連続立体交差事業と関連事業
 京浜急行線本線及び空港線は、羽田空港の再拡張により需要が増大する空港へのアクセス機能として、ますます重要な役割を果たすことになる。
 しかし、本路線は、国道15号線や環状8号線などの主要幹線道路のほか、多くの道路と平面交差しており、従来から慢性的な交通渋滞や事故、排気ガスによる環境悪化を引き起こし、長年、大田区の交通問題の最大の課題となっていた。
 これを解消するため、京浜急行本線及び空港線の京急蒲田・大鳥居間を高架化し、既存踏み切りの撤去、高架下の有効活用、駅のバリアフリー化、側道の整備を進める京浜急行連続立体交差事業が、平成11年3月に都市計画決定された。
 平成14年3月には全区間の事業認可を取得し、平成14年5月25日に起工式が行われた。
 この事業は、東京都、大田区、京浜急行の三者を共同事業者とし、総工費1,650億円、うち大田区負担金約200億円、高架化完了目途は平成24年度という大工事である。
 また、本事業に関連して、国土交通省関東地方整備局川崎国道事務所所管の国道15号線の蒲田立体交差事業や東京都建設局所管の国道15号線の拡幅事業、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所所管の国道15号線の共同溝整備事業が、それぞれ進められている。
 そのうち、第一京浜国道の蒲田立体交差事業については、平成16年5月30日に起工式が行われ、平成22年度完成に向けて工事が進められている。
 大田区の担当する事業としては、京浜急行沿線のまちづくり事業があり、京急蒲田、雑色、糀谷の各駅前広場を含む面的な整備やアクセス道路、関連側道の整備事業、一部の駅前自転車駐車場の整備事業等が含まれる。
 
(2)平成17年度の連続立体交差事業の進行状況
 早期完成に向けて大田区と京浜急行は、分担して事業用地の取得を行っており、さらに用地取得と並行して、工事が進められている。
 当委員会は、平成17年9月13日に京急蒲田駅工事現場の視察を行った。産業プラザで京急株式会社蒲田連立工事事務所より「都市部に最適な直接高架工法」等の説明を受けたあと、京急蒲田駅の工事現場で仮空港線への切替え等の説明を受けた。京浜急行本線は工事区域を6工区、空港線は2工区に、それぞれ分けて合計8工区として工区ごとに早期完成を目指し工事が進められている。平成17年10月1日から2日にかけて、京急蒲田駅構内の仮設空港線切替え工事が行われた。
 
(3)京浜急行沿線のまちづくり事業
 京浜急行沿線地域は、老朽化した木造建築物が多く、生活道路が狭い密集市街地で、防災上大きな問題を抱えている。また、駅周辺は、商店街の活性化、交通結節点としての駅前広場整備等の課題をもつ地域でもある。
 これらの課題解決のため、大森町と梅屋敷駅周辺では、駅へのアプローチのための区画街路の整備や駅前広場の役割を担う広幅員の関連側道の整備のための用地取得を進めている。また、京急蒲田、糀谷、雑色の駅周辺では、地元関係者の合意を図りながら、駅前空間の整備、住環境・商業環境の整備を行っていくため、区として積極的にまちづくりの支援をしている。
 
 ・京急蒲田駅周辺
 京急蒲田駅周辺地区の町会及び商店街を中心に、平成8年6月「京急蒲田周辺まちづくり連絡協議会」が発足し、情報提供や視察会等をおこなっている。西口では、平成11年2月に「京急蒲田西口地区まちづくり研究会」が発足し、平成16年度には検討する地区をAブロック、B-1地区、B-2地区とし、ブロック部会等による話合いを続けている。
 B-1地区において、平成16年8月30日に駅前再開発準備会が発足し、平成18年3月4日には京急蒲田西口駅前地区市街地再開発準備組合が設立された。さらに、Aブロックにおいては平成17年11月に建物を建てる具体的なルールとして、京急 蒲田駅西口地区地区計画が施行された。
また、平成18年2月には蒲田四丁目2番において蒲田4-2地区都心共同住宅供給事業に着手した。これは、共同建て替えや個別建て替えを促進し、安全・快適で賑わいのあるまち、商業と住宅が調和する複合市街地としてのまちづくりを目指すものである。
 一方、東口では、東口駅前広場の整備として、駅前広場完成イメージ図が示された。京急蒲田駅と産業プラザ側を結ぶペデストリアンデッキは歩行者専用となり、バス停留所やタクシー乗り場も整備される。最終設計までには若干の修正がされるということだが、利用者と地域の方々に対し十分な配慮が必要となる。
 
 ・糀谷駅周辺
 平成11年6月に「糀谷まちづくり研究会」が発足以来、平成14年から15年にかけて、「再開発によるまちづくり案」を地域や区行政に向けて発信した。続いて平成15年10月には、「糀谷駅前地区再開発準備組合」が結成され、「糀谷駅前地区再開発計画案」を発表し、具体的な事業化案の作成と都市計画決定にむけた合意形成に取組んでいる。
 
 ・雑色駅周辺
 雑色駅では、平成15年に地権者の組織である「雑色駅周辺まちづくり研究会」が発足し、活動を行っている。平成17年度は再開発に向けた具体的な検討・研究に取り組むため、新組織設立に向けた活動を開始した。
 まちづくりを進めていくうえでは、検討段階から準備段階、事業段階と、それぞれ地域の総意で進めることが重要であり、また大変な作業となる。
 活力ある商業地、安全で暮らしやすいまちの実現に向けて、地元地権者と区はより一層力を合わせて、取り組んでいく必要がある。
 
(4)交通網整備に関する対策について
 ・蒲蒲線・エイトライナー等、鉄道系交通機関の整備
 蒲蒲線については、「2015年までに整備着手することが適当な路線」という運輸政策審議会の答申を受け、平成14年度、15年度の2年間にわたる基礎調査が実施された。
 平成16年度には、取りまとめの整備基礎調査を国費調査と共に実施し、平成17年4月には「大田区東西鉄道「蒲蒲線」整備計画素案」が策定された。この整備計画素案では、蒲蒲線実現への課題や整備効果、事業性などが示されている。整備計画素案を基本に国や都、鉄道事業者などに対し整備実現に向け要請をし、公共交通として利便性の高い事業となるよう地元自治体として活動していくとある。
 平成17年8月には、既存ストックを有効活用しつつ都市鉄道ネットワークの機能を高度化する施設の整備を基本方針とする、都市鉄道等利便増進法が施行され、蒲蒲線整備の実現性が高まった。
 平成17年10月には区内自治会・町会、商工団体などの参画により蒲蒲線の整備促進のため活動を展開することを目的に「大田区蒲蒲線整備促進区民協議会」が発足した。
蒲蒲線は大田区の東西はもとより、東京西南部と羽田空港を結節する路線として一刻も早い事業化が望まれる。
 エイトライナーについては、平成17年7月28日にエイトライナー促進協議会の理事会総会が行われ、区部環状公共交通に関する調査報告があった。13、14年度は地下鉄方式についての検討がされたが、15、16年度は比較するために地上系交通システムを対象として導入の可能性について検討
を行ってきた。
 建設費、用地条件等を加味した実現性を考慮すると、デュアルモードタイプなどの交通システムの導入が考えられるが、課題は山積しており、最適な交通システムの探求などさらなる検討が必要である。
 また、十分な検証を行うためメトロセブン促進協議会との合同促進大会ならびにエイトライナー促進協議会単独の促進大会については平成17年度は実施しないこととなった。今後は事業の実現を目指し、単に要請行動を行うだけでなく過去の調査結果等の整理・検証を行い、平成27年に想定される次期答申を見据えたうえで、協議会としての活動方針の再構築を図っていくこととなった。
 
 ・バス路線の整備
 当委員会は、バス事業については、コミュニティバスの実現の可能性について、調査・研究を行い、平成15年の杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」に続き、平成17年に渋谷区の「ハチ公バス」を視察した。「ハチ公バス」は、東急バス株式会社が運営しているが、運営にあたっては、赤字分を区が補助している。平成16年には大田区内地域交通現況基礎調査報告書がまとめられ、候補ルートを選定し、運行条件等を設定して事業収支の予測を行っている。その中には、走行環境整備や採算性を考えれば自治体運営のコミュニティバスの運行には課題が多いとの報告もあった。
 大田区は、京急、東急、都営あわせて76系統のバスが運行されており、比較的バス路線は充実している。しかし、現実的に空白地域やJR線を境に、東西で交通アクセスの不便地域もあるので、コミュニティバスを福祉施策と考えて政策的に進めることも検討すべきである。
 また、バス会社においてもバスの利用客の飛躍的な増加は見込めず、利用客の減少により、首都圏のバス路線は縮小せざるを得ない状況ではあるが、バスナビゲーションシステムを稼動させる等サービス向上に努めながら、路線バスを廃止しないよう営業努力を続けている。
 コミュニティバスの運行など、あらゆる可能性に対して今後も調査・検討をして、交通アクセスの不便地域等の住民が不平等感のない地域生活を送れるように区は努力すべきである。
 
 ・鉄道駅舎のバリアフリー
 大田区は、他区や東京都に先駆けて平成7年度より「鉄道駅舎エレベーター等整備促進要綱」を整備し、交通バリアフリー法制定後も積極的に取り組んできた。
 平成17年度には、その対象駅としては連立事業で工事中のものを除き、京浜急行の穴守稲荷駅、都営地下鉄の馬込駅と西馬込駅、モノレール線の流通センター、天空橋の5駅を残すだけとなり、区内のほとんどの駅のバリアフリーが完了している。残された個々の駅については、敷地の問題や経費の関係等で整備が難しい状態のものもある。
 このような状況ではあるが、区は、地域の要望に応えるため、早期実現に向け各事業者に協力を求め話し合いを続けている。
 
(5)行政視察について
 当委員会では、平成17年11月1日、2日で、愛知県豊田市に行政視察を実施した。「クルマのまち」豊田市では、人と環境にやさしい交通まちづくりを推進している。ITS情報センターにおいての道路交通や駐車場情報等の総合情報提供など自動車の利便性向上を中心とした整備、また、環境に対する配慮として小型電気自動車共同利用など公共交通利用を促進している。平成17年7月には「豊田市交通まちづくり推進協議会」を発足させ、中心市街地来訪者交通対策などを検討・調査し定着化をめざしている。まちづくりも含めた交通問題対策として参考になる視察であった。
 
3 区民にとって快適な交通環境の整備に向けて
 京浜急行連続立体交差事業や京浜急行沿線のまちづくり事業等の進行により、沿線や駅周辺の景観は大きく変わっていくことになる。
 京浜急行線が高架化され、さらに「蒲蒲線」が完成することは、首都圏全体の産業発展や利便性の向上に寄与するとともに、沿線住民、区民にとっても喜ばしいことではある。しかし、結果として京浜急行線については、快速特急の運行増により不便な駅ができること、また、蒲蒲線については蒲田駅が単なる通過駅となってしまうことは避けなければならない。
 交通網の整備、商業地域の再開発等を契機として、地元はもとより大田区全体が活気あるまちとなることは、区民の願いでもある。さらに、区民の移動に便利で快適な都市づくりとともに全体が活気ある、区民が安心して暮らせるまちづくりをも進めていくべきである。
 連続立体交差事業も用地の取得、整備工事、駅周辺の再開発も併行して進められている。大規模な工事が安全に、事業者との話し合いが十分尽くされて進められるように監視していかなければならない。
 また、通勤・通学等の特定時間の輸送だけではなく、通院・買い物等の日常的な地域内移動の足となる、小回りのきく地域に根差した交通網の整備に向けて、区民と区と議会が力を合わせ、研究・提案を行っていく必要がある。
 
 以上のことから、今後も調査・研究を継続していく必要があることを強調し、本委員会の中間報告とする。

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