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交通問題調査特別委員会中間報告

ページ番号:334125952

更新日:2007年3月8日

平成19年3月9日

1 調査事件
 (1)京浜急行連続立体交差事業の推進について
 (2)交通網整備等に関する対策について

2 中間報告
 本委員会は、京浜急行連続立体交差事業、蒲蒲線整備事業の推進及び区民にとって安全で快適な生活基盤としての交通体系整備について調査・研究を行ってきた。これまでの調査結果については中間報告を行っているので、主に昨年6月以降の調査状況を報告する。

(1)京浜急行線連続立体交差事業と関連事業
 京浜急行線本線及び空港線は、羽田空港の再拡張により需要が増大する空港へのアクセス機能として、ますます重要な役割を担うことになる。
 しかし、本路線は、国道15号線や環状8号線などの主要幹線道路のほか、多くの道路と平面交差しており、従来から慢性的な交通渋滞や事故、排気ガスによる環境悪化を引き起こし、長年、大田区の交通問題の最大の課題となっていた。
 これを解消するため、京浜急行本線及び空港線の京急蒲田・大鳥居間を高架化し、既存踏み切りの除却、高架下の有効活用、駅のバリアフリー化、側道の整備を進める京浜急行連続立体交差事業が、平成11年3月に都市計画決定された。
 この事業は、東京都、大田区、京浜急行電鉄株式会社の三者を共同事業者とし、総工費1,650億円、うち大田区負担金は約200億円となっている。高架化完了目途は平成24年度、関連側道等、道路事業整備も含めた完了目標は平成26年度を予定している。
 本事業に関連して、国土交通省関東地方整備局川崎国道事務所所管の国道15号線の蒲田立体交差事業や東京都建設局所管の国道15号線拡幅事業、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所所管の国道15号線共同溝整備事業が、それぞれ進められている。
 大田区としては、京浜急行沿線のまちづくり事業を中心に担い、京急蒲田、雑色、糀谷の各駅前広場を含む面的な整備やアクセス道路、関連側道の整備事業、一部の駅前自転車駐車場の整備事業等を推進している。
 事業の進捗状況等、区はその広報活動にも力を入れており、京急蒲田駅構内への連続立体交差事業の情報コーナーの設置、都市計画事業のパンフレットの作成、京急連立ニュースの発行など積極的に行ってきている。

(2)平成18年度の連続立体交差事業の進行状況及び行政視察について
 早期完成に向けて大田区と京浜急行電鉄株式会社は、分担して事業用地の取得を行っており、その用地取得と並行し、本線、空港線計8工区に分かれ工事は進められている。
 当委員会は、平成18年9月8日に南海本線・高師浜線連続立体交差事業について視察するため、大阪府高石市を訪れた。事業規模は京浜急行線連続立体交差事業の3分の1程度であるものの、関西国際空港の開港に伴う交通量の増加や鉄道の輸送力増強による踏切での交通渋滞解消を目的としているなど、京浜急行線連続立体交差事業と共通点も多くみられた。
 平成18年9月12日には京急蒲田駅工事現場でその進捗状況を確認した。駅ヤード内にて京急京浜急行電鉄株式会社蒲田連立・空港線担当より「京急蒲田駅構内仮下り線敷設状況」等の説明を受けたあと、情報コーナー、B構台を視察した。なお、平成18年11月25日から26日にかけて、本線下り線仮線切替え工事は実施された。
 平成18年7月25日には産業プラザPiОにて「京浜急行線連続立体交差事業促進協議会総会」が開催された。この中で、促進協議会規約を改正するとともに、区長、議長、18地区自治会連合会会長等に工事現況の報告がなされた。
 さらに平成19年2月には、大森町駅、梅屋敷駅、京急蒲田駅、雑色駅、糀谷駅の新設に伴い、周辺自治町会、商店会による「駅舎の色彩等検討委員会」を発足させるための説明会を行った。

(3)京浜急行沿線のまちづくり事業
 京浜急行沿線地域は、老朽化した木造建築物が多く、生活道路が狭い密集市街地で、防災上大きな問題を抱えている。また、駅周辺は、商店街の活性化、交通結節点としての駅前広場整備等の課題をもつ地域でもある。
 これらの課題解決のため、連立事業をその契機と捉え、関連側道の整備、駅前、駅周辺地区のまちづくりが着々と進められている。大森町駅と梅屋敷駅周辺では、広幅員の区画街路を整備するため、区による用地取得が積極的に行われている。また、京急蒲田、糀谷、雑色の駅周辺では、市街地再開発事業を前提とし、地元関係者の合意を図りながら、駅前空間の整備、住環境・商業環境の整備の検討が行われている。

ア 各駅周辺地区のまちづくり
・京急蒲田駅周辺
 京急蒲田駅周辺地区の町会及び商店街を中心に、平成8年6月「京急蒲田周辺まちづくり連絡協議会」が発足し、情報交換や視察会等をおこなってきた。
 西口では、平成11年2月に「京急蒲田西口地区まちづくり研究会」が発足し、平成16年度には地区をAブロック、B-1地区、B-2地区に分割し、ブロック部会等による話合いを続けている。
 一方、東口については、駅前に規模2,400平方メートルの交通広場の整備が計画されており、国道15号蒲田立体交差事業整備に合わせて、区はその用地取得に着手している。 
 この東口駅前広場と京急蒲田駅、西口駅前広場は、ペデストリアンデッキと呼ばれる歩行者専用道で結ばれることが計画されている。
・糀谷駅周辺
 平成11年6月に「糀谷まちづくり研究会」が発足、平成15年10月には「糀谷駅前地区再開発準備組合」が結成され、「再開発によるまちづくり案」を地域や区行政に向けて発信した。平成18年8月には防災機能を有する駅前広場の整備や高層都市型住宅の整備等、具体的な都市計画原案が総会で決議され、区に都市計画決定の要請がなされた。
 しかしながら、再開発に不安を抱く地域住民もおり、現在その決定にむけた合意形成への取組みが行われている。
・雑色駅周辺
 雑色駅では、平成15年に地権者の組織である「雑色駅周辺まちづくり研究会」が発足、まちづくりに関するアンケート調査に基づき平成16年に「まちづくり構想案」を作成、区にも提案された。 平成17年7月には「(仮称)雑色駅周辺再開発協議会」の設立を目指した発起人会が発足、再開発に向けた具体的な検討・研究に取り組むための組織作りを検討している。

イ まちづくりへの区の支援
 区は平成8年11月に「大田区京浜急行沿線の再開発等推進団体に対する補助金交付要綱」を制定し、まちづくりを行う団体に活動費の一部を補助している。
 平成18年度は京急蒲田西口地区まちづくり研究会、京急蒲田西口駅前再開発準備会、糀谷駅前地区再開発準備組合、雑色駅周辺まちづくり研究会に補助を行った。
 また、区は駅周辺の再開発関連の調査委託も行っており、まちづくりを積極的に支援している。

 まちづくりを進めていくうえでは、検討段階から準備段階、事業段階と、それぞれ地域の総意で進めることが重要である。 
 しかし現在、糀谷駅前の再開発については、再開発準備組合が再開発対象地域の関係人から約7割の同意を得ているものの、反対派が存在する状況になっており、まだ、区の「都市計画決定」はなされていない。当委員会では平成18年12月6日に開催された委員会以降、両派から出された陳情に沿って審査を重ねてきた。しかしながら、再開発は推進すべき事業として理解をしながらも、合意なき住民が存在している中では、委員会として一定の方向性を見出すには至っていない。

(4)交通網の整備
ア 東西鉄道「蒲蒲線」
 蒲蒲線については、「2015年までに整備着手することが適当な路線」という運輸政策審議会の答申を受け、平成17年4月には「大田区東西鉄道「蒲蒲線」整備計画素案」が策定され、平成17年8月には、既存の都市鉄道施設間を連絡する新線の整備促進を内容とした、都市鉄道等利便増進法が施行された。
 また、平成18年11月10日には産業プラザにて、大田区蒲蒲線整備促進区民協議会が開催された。自治会連合会、大田区商店街連合会、大田区工業連合会などの委員に加え、国会、都議会、区議会の各議員などが一堂に会し、蒲蒲線整備促進の重要性が確認された。
 蒲蒲線は大田区の東西はもとより、東京圏西南部と羽田空港を結節する路線として一刻も早い事業化が望まれ、沿線地域のまちづくり促進、蒲田地域の活性化にも寄与すると期待されているものである。
 今後は蒲蒲線整備計画素案の更なる具体化のため、運行形態等のサービス水準の検討、既存鉄道との接続、交差部分の建設計画、そして京急線連続立体交差事業等との整合性を図りながら、国や都、鉄道事業者等との協議、調整を行っていかなければならない。

イ エイトライナー
 エイトライナーについては、平成18年7月26日に「エイトライナー促進協議会 理事会・総会」が行われ、区部周辺部環状公共交通導入検討調査の報告があった。地下鉄方式及びLRT、デュアルモードといった地上系交通システムについて、その導入が比較検討されたものの、事業費、採算性のほか都市構造上の役割や交通機能改善への寄与などの面でそれぞれに大きな課題を残しており、更なる調査の必要性が報告された。
 今後は事業の実現を目指し、平成27年に想定される次期答申を見据えたうえで、
 協議会としてコスト縮減策、事業スキームの更なる検討などへの取組みが求められており、大田区としてもその一員として東京都及び関連各区との協力を推進していく必要がある。

 本委員会は平成18年12月12日に「新交通 日暮里・舎人ライナー」を視察した。この新交通システムは、東京都と第3セクターの東京都地下鉄建設株式会社が、平成19年完成を目指して荒川区及び足立区内に整備をしているものである。蒲蒲線、エイトライナーの導入整備についてはその用地確保やコストに課題を抱えており、この観点からの新線視察は非常に有意義なものとなった。

ウ コミュニティバスの検討
 当委員会は、コミュニティバス実現の可能性について、調査・研究を行ってきた。平成15年には杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」を、平成17年には渋谷区の「ハチ公バス」を視察し、平成18年9月7日には大阪市の通称「赤バス」を視察した。この「赤バス」は、道路環境等からバスの運行が困難とされていた地域に配備され、福祉施設、公共施設、商店街、病院など地域住民の日常生活に密着した施設を連絡するものである。この赤バスについて大阪市より、採算性の確保は困難な状況にあるが、地域での有効性や必要性(福祉施設の利用増加、駐車対策 等)を総合的に勘案し、全市的な観点から運営しているとの説明を受けた。大田区は平成16年に大田区内地域交通現況基礎調査報告書をまとめており、コミュニティバスの運行には、設定ルートにより差はあるものの、一つのルートで年間三千万円以上の赤字が予測され、民間バス会社へ委託する場合も厳しい状況であるとしている。
 現在区内には、京急、東急、都営あわせて76系統のバスが運行されており、比較的バス路線は充実している。しかしながら、現実的に交通空白不便地域は存在し、JR線を境にした東西交通アクセスの不便さも問題となっている。さらには、高齢者人口の増加や幼児連れの方の日常支援など、コミュニティバスへの需要はますます高まってきており、その導入については福祉施策の観点からも積極的に検討し進めていく必要がある。

エ 鉄道駅舎のバリアフリー
 大田区は、他区や東京都に先駆けて平成7年度より「鉄道駅舎エレベーター等整備促進要綱」を整備し、交通バリアフリー法制定後も積極的にバリアフリー化に取り組んできている。
 平成18年度には、モノレール線の流通センターがバリアフリー化され、その対象駅としては連立事業で工事中のものを除き、京浜急行線の穴守稲荷駅、都営地下鉄の馬込駅と西馬込駅、モノレール線の天空橋の4駅を残すだけとなり、区内のほとんどの駅でバリアフリー化が完了した。  
 残された個々の駅については、敷地の問題や経費の関係等で整備が難しいものもあるが、区が従来にもまして、各事業者との実現に向けた協議を重ねていくことが求められる。

3 区民にとって快適な交通環境の整備に向けて
 京浜急行本線・空港線の高架化整備は、羽田空港へのアクセス強化をもたらすものと期待されている。しかし一方で、その沿線地域の住民、さらには大田区民の生活環境向上に寄与した“まちづくり”の契機としなければならない。
 現在、沿線各駅周辺では地域住民が中心となり再開発に取組んでいる。しかしながら、推進と反対で意見が分かれ、再開発についての合意形成が十分になされていない地域も見受けられる。
 京浜急行線の高架化、蒲蒲線、エイトライナーといった鉄軌道整備とともに交通空白・不便地域の解消や高齢者や障害者の移動手段確保といった、地域内移動を目的とした身近な交通網の整備も重要な課題となっている。
 快適な交通環境整備は即ち快適なまちづくりの基本である。将来を見据え交通網整備、まちづくりを積極的に推進していくことは重要であるが、その整備、再開発等により今までの生活を変えざるを得ない住民の存在についても深く理解の上、推進しなければならない。現在及び将来にわたり区民の利便の向上を図る交通関連事業が行われるよう、更なる調査・研究の必要性を強調し、本委員会の中間報告とする。

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