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防災・安全対策特別委員会中間報告

ページ番号:142535913

更新日:2008年6月3日

平成20年5月23日

1 調査事件
   防災対策について
   危機管理対策について
   地域防犯対策について

2 中間報告
 当委員会では、大地震、風水害などの自然災害や多様化・複雑化する危機に対し区民の生命、財産を守り安全・安心なまちづくりを実現するために、多岐にわたり調査研究を行った。
その経過は以下のとおりである。
   
(1)防災意識の向上
 昨年は、能登半島地震、新潟県中越沖地震や台風、大雨の被害等で多くの死者や負傷者が出て、自然災害の恐ろしさを再認識した一年であった。
災害から自分の身を守るためには、平時から区民一人ひとりが防災に関する意識を高め、正しい知識や技術を修得することが重要であり、社会全体で具体的な行動に取り組む必要がある。
そのためにも、区は、災害に強いまちづくりを推進し、地域の防災行動力の向上と防災対策の充実をこれまで以上に展開していかなければならない。

ア 大田区地域防災計画
 区は、マグニチュード7.3の東京湾北部地震の被害想定を前提に、計画全体を見直した修正案を作成した。高齢者や障がい者などの災害時要援護者への支援は、この計画の重点的な取り組みのひとつであり、対策の一環として、家具転倒防止対策の推進、要援護者を支援するための情報整備の進展、災害時の迅速な情報伝達のために防災行政無線のデジタル化、洪水ハザードマップの作成、周知を盛り込み、防災力の一層の向上を目指している。委員からは、災害時に区民が取るべき行動を始めとして、さらに多くの区民に対して、計画の周知方法の工夫に努めていく必要があるとの意見が出された。

イ 大田区総合防災訓練
総合防災訓練については、計画から実施まで地域住民、町会関係、消防、警察、消防団など防災関係機関の協力をもとに、8月から10月にかけて各地域行政センター所管で、2,434名が参加し実施された。
 基本的には、初期対応、初動期対応訓練ということで、まちなか訓練を実施し、避難所となる学校の中で情報連絡訓練をはじめとした訓練を行った。
 地域によっては、備蓄倉庫等の内容の確認や、単管パイプ等を使った簡易な仮設避難橋を工作して、橋が壊れたときの対応訓練をしたり、関係機関とともに、炊き出しや輸送訓練などを行った。それぞれ地域の実情に応じて工夫を凝らし、地域住民が主体となった体験型訓練が行われた。
このような訓練を一つの契機として、区民は、家庭内の安全を今一度確認し、近隣住民との連携を深めるとともに、災害が発生したときにも冷静な行動がとれるよう、普段の訓練と防災に対する意識の向上が求められている。
また関係機関にとっても、多岐に渡る防災体制の実効性を確認・検証し、多くの関係者に防災業務を修得させるためにも、このような実践的な防災訓練が不可欠である。
委員からは、災害による被害の発生を未然に防止し、軽減するため、災害に強いまちづくり、地域づくりをさらに進めていくことが大切である。訓練も、区民一人ひとりの防災意識の高揚のために、災害時要援護者や外国人などが参加しやすい施策の実施、効果的な防災訓練の実施等を検討されたい、との意見が出された。

ウ 風水害等による区内の被害状況
当委員会では、集中豪雨や台風による降雨量、被害状況、区の活動状況等が報告された。5月31日には、突発的な集中豪雨があり、区は防災課、各地域行政センター、総勢42名で、大雨洪水警報に対応した。具体的な被害は、道路冠水や東雪谷の下水マンホールについて緊急対応した。
続いて、6月10日も大雨洪水警報が出たので、防災課と東センターの5名で対応した。具体的な被害は、道路冠水があり、消防署とも連携をとりながら対応した。また、大森東の旧呑川緑道の排水溝が詰まり、通行できない状態だったので、除去した。区民や住宅への直接的な被害はなかった。
また7月には台風4号が発生した。区は、水防態勢を設置し、事前に対応を取った。日本各地に被害をもたらした台風であったが、区には、幸いにも大きな降雨量はなく区内の被害は発生しなかった。
さらに9月には台風9号と大雨が生じた。9月6日、台風9号に伴い、23区西部に大雨、洪水、暴風、波浪警報が発表された。翌7日には洪水警報が発表になった。区は警報等に伴い、水防指揮本部として、総数146名で水防一次態勢、水防二次態勢を組み、倒木、危険排除、土のう配布等の対応にあたった。被害としては、停電が2件と河川敷の冠水があり、多摩川のホームレス等の救出対応などを警察、消防とともに行った。
続いて、9月11日も大雨、洪水警報が発令された。区内でも、特にマンホールからの逆流などの排水量のオーバーにより床上・床下浸水という被害が出た。西糀谷、田園調布一丁目で停電も発生した。
そのほかいくつかの台風が通過し、水防監視体制、夜間連絡体制が敷かれたが、被害等はみられなかった。これらの経験を教訓とし、対策を講じておくことにより、複雑・多様化する災害態様への適切な対応が可能となる。今後も態勢の充実と迅速な対処の徹底が望まれる。

エ 新潟県中越沖地震に伴う区の支援
7月16日、新潟県上・中越沖を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生し、それに伴い多くの人的被害、住宅被害が生じた。発災後、区は、都、他の自治体、また新潟県の災害対策本部と迅速に連絡をとり、必要なものを必要なときに、との考え方のもとで、人的な支援、救援物資の支援を行った。
まず、7月19日から建築職員を派遣した。職員は、応急危険度判定員として、被災地の建物を調査し、居住者および地域住民に被災状況を知らせることで二次被害を防止し、住民の安全の確保に努めた。
続いて8月9日から保健師を派遣し、地域の衛生、被災者の心身のケア対応を行った。
さらに、8月の最終週からは、ごみ収集の応援体制としてパッカー車、収集作業員を派遣し、大量に出た家庭ごみ等の処理を行った。
また、救援物資については、被災地から強い要望があったガスコンロ、ガスボンベ、ブルーシートを搬送した。
この経験をもとに、区は1月19日、災害時要援護者の支援を考える講習会を開催した。派遣した職員からは、実際の状況、災害の恐ろしさ、日頃の備え、などについて報告があった。実際に目撃、経験した被災地の状況や支援活動を通じて得た教訓を、広く区民に伝えることにより、防災意識や防災行動力の更なる向上に繋げていった。
委員からは、情報収集体制の充実、地域のなかで顔の見える関係性やコミュニティを築いていくことの重要性について意見が出された。

オ 兵庫県神戸市の視察について
19年8月、大規模地震後の復興計画の総括・検証、さらなる地域力強化の取り組みを調査するため、兵庫県神戸市を視察した。1995年(平成7年)1月17日にマグニチュード7.3の規模で発生した阪神・淡路大震災は、神戸市において死者4,571人負傷者14,678人という大惨事を引き起こした。神戸市は、復興計画により、様々な方策を展開し、震災の経験やノウハウを他団体に継承するべく、他自治体をはじめとして、国内外を問わず、被災地への積極的支援を行っている。
視察では、先方より、市の現状、計画の進捗状況、市民生活分野・都市活動分野・すまい、まちづくり分野・安全都市分野等様々なワークショップの様子、広域災害支援マニュアルについて詳細な説明を受けた。計画は「復興」であり「復旧」ではない。震災を契機に生まれた新たな取り組みや仕組みをこれからの神戸づくりへ継承・発展させなければならないとの担当者の熱意が強く感じられ、様々な観点から質疑、意見交換を行うことができた。
委員からは、震災後の地域のコミュニティの再建、NPO,消防団員の状況、建物の状況、商店街の売り上げの回復状況などについて質疑が出た
また、震災を風化させないように、あえて震災で壊れたままの状態で保存してあるメモリアルパークや、犠牲者の慰霊と復興の意義をアピールする慰霊と復興のモニュメントも視察した。曲がったままの電燈、想像できないほど崩れた地盤を目の当たりにし、言葉では伝わりきれない震災の凄まじさ、復興への道程について学んだ。各委員は熱心にメモをとり、現場の状況を撮影していた。
ここ数年、大規模地震発生の切迫性が指摘されている地域以外において大きな地震が発生しており、地震はどこでも発生しうることが改めて認識される。今回の視察を通じ、災害時において関係団体との相互連携、災害意識の啓発、自主防災組織の育成強化などの重要性について、改めて認識するとともに視察で得た知識や経験を生かし、区の防災対策に反映させていくことで、より良い施策を区とともに構築していくことが重要であると考える。

(2) 危機管理能力、地域防犯意識の向上
今日、私たちの身近な生活環境において、自然災害に限らず様々な危機が存在している。昨年は、神奈川県平塚市のスーパーのエスカレータで小学生が頭部を挟まれる事故や渋谷区で温泉施設が爆発火災を起こし、従業員が死傷し、通行人が怪我をするという事故が発生した。また、兵庫県加古川市では、帰宅した小学生が自宅近くで刺殺されるという痛ましい事件が発生し、現在未解決である。
多様化する危機に対し、行政、地域、関係機関が強く意識し、相互に連携して職務を遂行すること、密接に連携することの必要性がますます高まってきている。
区は、区民の生命と財産を守るため、危機を未然に予防し、その際は的確に対応できる危機管理能力を向上させる施策を実行していかなければならない。

ア 振り込め詐欺撃退用安心カードについて
9月25日、区は関係機関の協力により振り込め詐欺の緊急連絡対策会議を開催した。そのなかで、具体的な取り組みとして、振り込め詐欺撃退用安心カードを配布することになった。このカードは、各家庭の電話機に結束し、不審な電話がかかってきた際に、あわてずにカードを見て対応することにより、家族等に内容を確認して、被害を未然に防止することを目的としている。
昨今、振り込め詐欺の手口が巧妙化し、被害も深刻になっている。委員からは、このような取り組みは、高額な費用もかからず一人ぐらしの高齢者と行政をつなぐ、大変良いシステムである。高齢者の被害を防ぐためには、今後も適正な情報提供や地域が高齢者を支える体制の整備が必要との意見がでた。

イ 区民安全・安心メールサービスの提供
区は本年4月1日から、区のホームページの携帯サイトを活用して、区民向けに不審者情報と防犯・防災情報を加えて、防犯・防災力を高めていくために、区民の安全・安心全配信メールサービスを実施した。このメールサービスは要援護者の聴覚障害にも周知することにより、その対策に役立つこととなる。
このメールサービスには、区民向けの全配信のものとし、現行の子ども緊急連絡システムでも不審者情報に加えて、必要であれば選択制で、防災情報・防犯情報もとれるような形に変更した。不審者情報については、地図情報も得られるようにした。また、職員の緊急参集システムにも活用し内容の充実を図ることとした。
 これらの新しい施策・取り組みについては、まだ始まったばかりであり今後、システムが円滑かつ効果的に実施していくためには、現場の実態をふまえて、今後効果検証を重ねることにより、一層の充実・強化していくことが肝要である。

ウ 東京消防庁所管施設視察
平成19年12月、事故等が発生した際の適切な処置を習得するため、東京消防庁が所管する池袋防災館を視察した。防災館では、救急車が来るまでの応急手当として、人工呼吸、心臓マッサージ、AEDの処置を受講した。また、建物で発生した煙や停電中に起きた地震の擬似体験を通して、事故発生時の人間の起こしがちな誤りや、適切な避難方法について学習した。

エ 大阪府高槻市の視察
平成19年8月、子どもにとって安全・安心なまちづくり、という観点から大阪府高槻市の取り組みについて視察を行った。高槻市は人口規模に対して、府内でも有数の犯罪発生率の低い自治体である。子どもの目線にたち、子どもにも安全について考える機会をつくり、保護者・地域全体で子どもを見守る体制を確立している。担当者より、子どもにも、理解しやすく小学校の総合事業で活用できる防犯冊子、インパクトがあり、わかりやすいメッセージ性をもつものとして様々な車種に対応できる安全啓発ステッカー、児童への安全指導とともに保護者へ安全に対する注意の喚起を図ったリーフレットについて、実物を示しながら具体的な説明を受けた。
委員からは、イラスト等も含めて市オリジナルで作成した冊子の作成費用、市民からの反応、効果、安全ステッカーの運用上実際に苦労した点、セーフティボランティアについて闊達な質問が出された。今後の委員会審査のうえで大変参考となる視察となった。

「備えあれば憂いなし」という。大田区は、一人でも多くの区民に正しい防災知識を周知し、いざというときに個人や地域、企業や行政など、それぞれの立場における努力によって、まちの安全がしっかりと確保できるよう努めるべきである。
自分の身は自分で守る、自分たちのまちは自分たちで守るという自助、共助の意識のもと、区民一人ひとりが、また自主防災組織などを中心に、地域での防災体制、危機管理対応力を強化していく必要がある。区は、個人や家庭、地域、企業、団体など多様な主体により働きかけることで、災害被害および危機を軽減することが求められている。
大田区は、今後とも安全・安心なまちづくりの実現のため一層の調査・研究を行い、防災行動力の進展と防災対策の充実、危機管理能力の増進に努めていくことを望む。

最後に、今後も安全、安心のまちづくりへの取り組みに対して多様な視点から審議、提言を行う必要性を強調し、防災・安全対策特別委員会の中間報告とする。

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