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交通問題調査特別委員会中間報告

ページ番号:808868722

更新日:2008年6月3日

平成20年5月23日

1 調査事件  
  (1) 京浜急行連続立体交差事業の推進について
(2) 交通網整備等に関する対策について

2 中間報告
本委員会は、京浜急行線連続立体交差事業の推進及び区民にとって安全で快適な生活基盤としての交通体系の整備に向けて、調査研究を行うために平成15年に設置された。
ここに主に昨年6月以降を中心にした、これまでの調査結果について報告する。

(1) 京浜急行連続立体交差事業と関連事業
京浜急行線本線及び空港線は、羽田空港の再拡張により需要の増大が予想される空港へのアクセス機能として、ますます重要な役割を果たすことになる。
 しかし、本路線は、国道15号線や環状8号線などの主要幹線道路のほか、多くの道路と平面交差しており、従来から慢性的な交通渋滞や事故、排気ガスによる環境悪化を引き起こし、長年、大田区における交通問題の最大の課題となっていた。
この解消のため、京浜急行本線及び空港線の京急蒲田・大鳥居間を高架化し、既存踏み切りの除却、高架下の有効活用、駅のバリアフリー化、側道の整備を進める京浜急行連続立体交差事業が平成11年3月に都市計画決定・平成12年12月及び平成14年3月に事業認可され、平成14年5月には起工式が行われた。
この事業は、東京都、大田区、京浜急行電鉄株式会社の三者を共同事業者としており、総工費は1,650億円、そのうち、大田区の負担金は約200億円となっている。高架化完了目途は平成24年度、関連側道等、道路事業整備も含めた完了目標は平成26年度を予定している。
本事業に関連して、国土交通省関東地方整備局川崎国道事務所所管の国道15号線の蒲田立体交差事業や東京都建設局所管の国道15号線拡幅事業、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所所管の国道15号線共同溝整備事業が、並行してそれぞれ進められている。
また、大田区としては、京浜急行沿線のまちづくり事業を中心に担い、京急蒲田、雑色、糀谷の各駅前広場を含む面的な整備やアクセス道路、関連側道の整備事業、一部の駅前自転車駐車場の整備事業等を推進している。

(2) 平成19年度の連続立体交差事業について
早期完成に向けて大田区と京浜急行電鉄(株)は、分担して事業用地の取得を行っており、その用地取得と並行し、本線、空港線計8工区に分かれ工事は進められている。
当委員会では、平成19年8月21日に京急蒲田駅周辺工事現場への視察を実施した。当日は、産業プラザにて京浜急行電鉄(株)の蒲田連立・空港線担当より進捗状況の説明を受けたあと、蒲田三丁目・多摩堤通り沿いに隣接した工事ヤード内の2層高架橋から本線工事現場を確認した。
また、環状八号線をまたぐ京急蒲田第5踏切の仮設高架橋への視察も実施した。この京急蒲田第5踏切を含む京急第4、第6、第8踏切間の上り線、約800メートルは、平成20年5月18日に仮設高架橋に切り換え、仮立体化された。これにより、遮断時間が4割短縮することが見込まれ、交通渋滞の緩和が期待されている。
   

(3) 京浜急行沿線のまちづくり事業
京浜急行沿線地域は、老朽化した木造建築物が多く、生活道路が狭い密集市街地で、防災上大きな問題を抱えている。また、駅周辺は、商店街の活性化、交通結節点としての駅前広場整備等の課題をもつ地域でもある。
これらの課題解決のため、大田区は連立事業をその契機と捉え、関連側道の整備、駅前、駅周辺地区のまちづくりを地域とともに着々と進めている。大森町駅と梅屋敷駅周辺では、広幅員の区画街路を整備するため、区による用地取得が積極的に行われている。また、京急蒲田、糀谷、雑色の駅周辺では、市街地再開発事業を前提とし、地元関係者の合意を図りながら、駅前空間の整備、住環境・商業環境の整備の検討が行われている。

 ア 各駅周辺地区のまちづくり
・京急蒲田駅周辺
西口では、平成11年に発足した「京急蒲田西口地区まちづくり研究会」を中心に、地区を三つに分割し、まちづくりが推進されている。
その中の駅前地区では、平成18年3月に設立された市街地再開発準備組合が、平成19年10月に京急蒲田駅再開発基本計画案を区に提示した。本素案は、主に再開発ビルのイメージを内容としており、現在、これを基に都市計画決定へ向けての合意形成が図られている。また、それに並行して区も西口周辺街路事業を推進しており、その整備計画説明会を平成19年11月19日に開催している。
当委員会において西口周辺街路計画についての報告がなされた際には、委員から、新設される補助328号線の歩道拡幅、また、利用者の動線を熟慮し、機能性に優れたペデストリアンデッキの設置などの要望が出た。
一方、東口については、駅前に規模2,400平方メートルの交通広場の整備が計画されており、国道15号線蒲田立体交差事業整備に合わせて、区はその用地取得を行っている。 

・糀谷駅周辺
「糀谷駅前地区再開発準備組合」は平成15年10月に結成され、「再開発によるまちづくり案」を地域や区行政に向けて発信してきた。平成18年8月には防災機能を有する駅前広場の整備や高層都市型住宅の整備等、具体的な都市計画原案が総会で決議され、区に都市計画決定の要請がなされた。
このような状況の中、前年度に続き、平成19年5月、糀谷駅前再開発計画の見直しを求める陳情が再開発に反対する会より提出された。議会としては、再開発反対の立場についても十分理解を示した上で、防災上の観点から再開発は推進されるべきものであり、何より再開発への合意形成は地権者自身が行うべきという立場から、陳情を不採択とする一定の結論を出すに至った。それと同時に、ストップしていた反対派と推進派との会合機会の調整を区に強く要望した。これ以降、両派の会合が開催されている。
その後、糀谷駅前地区第一種市街地再開発事業計画案等については、平成19年9月22日に都市計画(案)の説明会が開催され、公告縦覧を経た後、平成20年1月11日に、第137回大田区都市計画審議会にて、「諮問のとおり定めることが適当」という答申を得るに至った。さらに平成20年2月7日に開催された第180回東京都都市計画審議会でも計画案等は承認され、平成20年3月7日に都市計画決定がなされた。

・雑色駅周辺
雑色駅では、平成15年に地権者の組織である「雑色駅周辺まちづくり研究会」が発足、まちづくりに関するアンケート調査に基づき平成16年に「まちづくり構想案」を作成、区にも提案された。その後、再開発に向けた具体的な検討・研究に取り組んでいる。

 通常、まちづくりを進めていくうえでは、検討段階から準備段階、事業段階と、地域の合意形成が重要となる。 
 しかしながら、糀谷駅前再開発については、再開発準備組合が再開発対象地域の関係人から約7割の同意を得て都市計画決定がなされたものの、一方で再開発に反対する会も存続している。議会としては、推進と反対双方の意見調整の機会作りを区に対し改めて求めていくとともに、今後、再開発が進んで行く京急蒲田駅西口や雑色駅についても、地域の合意形成が図られているか注視していかなければならない。

(4) 交通網の整備
ア 新空港線「蒲蒲線」
蒲蒲線は大田区の東西はもとより、東京圏西南部と羽田空港を結節する路線として一刻も早い事業化が望まれ、沿線地域のまちづくり促進、蒲田地域の活性化にも寄与すると期待されているものである。
平成19年3月に、区は改めて蒲蒲線整備調査をまとめた。この調査は蒲蒲線整備による大田区内での影響に主点を置いたものであり、整備による効果を日常生活での利便性、地域の拠点性の向上としている。
平成19年11月7日には産業プラザにて、大田区蒲蒲線整備促進区民協議会が開催され、自治会連合会、大田区商店街連合会、(社)大田工業連合会などの委員に加え、国会、都議会、区議会の各議員などが一堂に会し、蒲蒲線整備促進の重要性が確認された。
今後は平成17年に作成された蒲蒲線整備計画素案について、運行形態等のサービス水準の検討、既存鉄道との接続、交差部分の建設計画、そして京急線連続立体交差事業等との整合性を図りながら、国や都、鉄道事業者等への事業化に向けた要請が必要である。
しかしながら、何よりも蒲蒲線が区民にとって真に有効なものとして機能するためには、蒲田駅が単なる通過駅とならないようにするという大きな課題があり、商業・産業振興を含めたまちづくりの観点も視野に入れての協議・調整が行われるよう、議会として注視していかなければならない。

イ エイトライナー
 エイトライナーについては、平成19年7月26日に「エイトライナー促進協議会 理事会・総会」が区民ホール アプリコで開催され、導入検討調査に関する報告等が行われた。
今後は事業の実現を目指し、平成27年に想定される次期答申を見据えたうえで、協議会としてコスト縮減策、事業スキームの更なる検討などへの取組が求められており、東京都及び関連各区との協力を推進していく必要がある。

   
ウ コミュニティバスの検討
大田区内では、京急、東急、都営あわせて76系統のバスが運行されており、比較的バス路線は充実している。しかしながら、現実的に交通空白不便地域は存在し、JR線を境にした東西交通アクセスの不便さも問題となっている。さらには、高齢者人口の増加や幼児連れの方などの日常支援など、コミュニティバスへの需要はますます高まってきており、福祉施策の観点からもその導入は急務となっている。
このような状況下、新区長のもと策定された大田区緊急2か年計画では、その導入が掲げられ、事業実施は一気に加速する中、当委員会でも、コミュニティバス導入実現に向けて、積極的に調査・研究を行ってきている。
(1) 行政視察の実施
 大田区への導入において、最善の形態を探るべく、平成15年には杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」を、平成17年には渋谷区の「ハチ公バス」を視察し、平成18年9月には大阪市の通称「赤バス」を視察した。そして平成19年から平成20年にかけては以下のコミュニティバス視察を実施した。
・「C-BUS」
(事業主体 三重県鈴鹿市)
 市内の高齢者率の高い地域を運行。導入の際、グループインタビューを実施し、地域住民の本音を反映させた。なお、このグループインタビューは運用開始後のフォローアップ調査でも行われている。バスのデザインや到着時間の毎時統一など多様な工夫がみられるものの、事業としての採算性は達成できておらず、市の補填を受けているのが現状のようである。
・「醍醐コミュニティバス」
(事業主体 醍醐コミュニティバス市民の会)
 京都市伏見区醍醐地域で運行。地域の自治会組織が自主的に「コミュニティバスを走らせる会」を結成、行政からの補助を全く受けずに、パートナーズと呼ばれる広告主と年額3千円と1万円で募った個人応援団のみで運営している。
・「サンクスネイチャーバス」
(事業主体 NPO法人サンクスネイチャーを走らす会)
目黒区自由が丘駅近辺を運行。地域の商店や企業及び個人からのサポーター会費や協賛金で運営されており、運行自体へ区からの補助は受けていない。このバスは廃食油をリサイクルしたV.D.Fと呼ばれる燃料を使用するなど、環境にも配慮している。
(2) バス事業者との懇談会
 平成19年11月15日には、コミュニティバスの区内導入について、京急バス(株)と東急バス(株)との懇談会を実施した。両社とも、採算性の確保という問題はあるものの、コミュニティバスの必要性については一定の理解を示すに至っている。
(3) 大田区コミュニティバス導入検討会
 区では、東工大の室町准教授を会長に据え、東京商工会議所、自治会連合会、観光協会、蒲田警察署、バス事業者等の代表による、「大田区コミュニティバス導入検討会」を発足させ、平成19年12月14日に第1回目の会合を開催した。その後、第2回、第3回と検討会が実施された。
 検討会では、区民の意向を把握するため、区民アンケート調査を実施し、その結果を踏まえ、区の公共交通体系におけるコミュニティバスの役割や必要性を明確にした。その上で、コミュニティバス導入候補地について検討を重ね、平成20年4月の委員会では、「平成19年度大田区コミュニティバス導入検討会報告書」についての説明の中で、導入候補地域として矢口地域、南馬込地域、西蒲田地域を選定したとの報告を受けた。その後、この候補地域の中から、区は矢口地域をモデル事業地域として決定し、平成20年5月9日開催の委員会の中で発表した。

コミュニティバスの導入は区民の願いでもあり、異論の無いところであるが、事業採算性の面から、将来的にその運行を継続していくことは大変厳しいものである。そのため、地域には、主体となってコミュニティバス事業を牽引していく姿勢とともに、運行を維持していく創意工夫が求められており、行政支援のあり方も含め、議会として、導入・継続の更なる調査・提案をしていく必要がある。

エ 鉄道駅舎のバリアフリー
大田区は、他区や東京都に先駆けて平成7年度より「鉄道駅舎エレベーター等整備促進要綱」を整備し、交通バリアフリー法制定後も積極的にバリアフリー化に取り組んできている。
対象駅としては連立事業で工事中のものを除き、京浜急行線の穴守稲荷駅、都営地下鉄の馬込駅と西馬込駅、モノレール線の天空橋の4駅を残すだけとなり、区内のほとんどの駅でバリアフリー化が完了している。  
残された個々の駅については、敷地の問題や経費の関係等で整備が難しいものもあるが、区が従来にもまして、各事業者との実現に向けた協議を重ねていくことが求められる。

3 区民にとって快適な交通環境の整備に向けて
京浜急行本線・空港線の高架化整備は、羽田空港へのアクセス強化をもたらすものと期待されている。一方で、その沿線地域の住民はもとより大田区民の生活環境向上に寄与した“まちづくり”の契機としなければならない。
現在、沿線各駅周辺では地域住民自身が中心となり再開発に取り組んでいる。しかしながら、推進と反対で意見が分かれ、再開発についての合意形成が課題となっている地域も見受けられる。
京浜急行線の高架化、新空港線「蒲蒲線」、エイトライナーといった鉄軌道整備とともに交通空白・不便地域の解消や高齢者や障がい者の移動手段確保といった、地域内移動を目的としたコミュニティバスの区内整備も重要な課題となっている。
快適な交通環境整備は即ち快適なまちづくりの基本である。地域の将来を見据えた、交通網整備、まちづくりが積極的に推進されるよう、更なる調査・研究の必要性を強調し、本委員会の中間報告とする。

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