【コラム】大田区町工場の力を集結!~競技用車いす開発に挑戦~

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更新日:2020年8月19日

競技用車いすを製作するため、区内の14企業が集結!

公益財団法人大田区産業振興協会が支援した事業の一つとして、車いすラグビーのローラートレーナー(トレーニング器具)の開発に携わったのがきっかけで、競技用車いすの開発を推進しています。区内の14の企業が参画しています。

この事業では、車いすテニスと車いすバスケットボールの車両部品開発に努めてきました。

車いすバスケットボールの部品開発

バスケットボール用車いすの部品は、クランプ(フレーム同士を留める金具)とキャスターが2種類、製作されました。


バスケットボール用車いす


バスケットボール用車いすの部品(キャスター2種類とクランプ)

車いすテニスの部品開発

テニス用車いすは、フレームが製作されました。

テニス用車いす

開発に携わった企業にインタビューしました!

キャスターの設計・組み立てを担当

 株式会社カセダ 代表取締役 加世田光義さん

Q 競技用車いすの開発に参加することになったきっかけは何ですか。
A 当社では、24~25年前から区内企業と協力して、車いすのブレーキ装置や電動車いすの衝突回避装置などの福祉関係の開発を行っていました。

 そんな折、平成27年度に車いすラグビー用のローラートレーナー(トレーニング器具)の製作に参加することになりました。製作したローラートレーナーを日本代表選手に使用してもらった実績もあって、自分が設計した製品をまた使ってもらいたいという思いもあり、今回の競技用車いすの開発に参加することになりました。

Q キャスターはどのように作っているのですか
A 当社は設計と最後の組み立てを担当しました。
 キャスターの部品は、切削や金属加工など、大田区の企業がそれぞれに持っている技術を生かして、設計図どおりに作ってもらいました。
(1)設計
 キャスターの設計図を完成
(2)部品製作
  キャスターの部品を区内7~8社の企業が分担して製作。
(3)完成
  すべての部品を組み立て完成。

Q キャスターの設計で苦労したことはありましたか。
A キャスターは私自身、初めて設計を行ったので、最初は車いすメーカーの松永製作所様からサンプルを借りて設計を始めました。

 まずは、重量的にも軽く、回転も軽くて動きやすい部品を作ろうと思って試行錯誤しました。

 一度止まって、また走り出すときの、走りやすいや重さを少しずつ調整したり、どの寸法がいいのか色々試しながらやっていました。

 時には、実際に練習会場へ行って、選手に使った感想を聞くこともありました。そうすると、キャスターが固い方が良い選手もいれば、柔らかい方が良い選手もいて、全員にこれが良い、というものはありません。自分の体力や障がいの程度、プレースタイルなどによって使いやすいものが変わってくるようでした。たくさんの選手の声を聞き、開発に生かすことができました。


Q これからの目標を教えてください
A 来年のパラリンピックで設計したキャスターを多くの日本代表選手に使ってもらえると嬉しいです。
 今後も車いすなどの福祉分野はもとより、設計できるものだったら、どんなものでも取り組んでいきたいですね。

金属切削を担当

 株式会社エース 代表取締役 西村修さん

Q 競技用車いすの開発に参加することになったきっかけは何ですか。
A 平成27年度に、大田区企業が連携して車いすラグビー用のローラートレーナー(トレーニング器具)を製作しました。その支援をした大田区産業振興協会が、その経験を次につなげていくために、競技用車いす事業を推進しました。そして、岐阜県に本社がある競技用車いすの大手メーカーの株式会社松永製作所さんへ打診し、開発に協力していくことが決まりました。
 松永製作所さんは車いすバスケットボールチームをサポートしていて、開発している車いすが持っていた課題がいくつかありました。
 大田区のものづくり企業が集まり、新しいアイディアやこれまでとは違った見方などを取り入れ、選手にとってより良いものを作るために、今回のプロジェクトが発足しました。
 その時、私が下町ボブスレーで製作担当の副委員長をやっていた関わりもあったので、大田区産業振興協会から一緒にやりませんか、とのお声がけがあり、参加することになりました。
 また、自分たちのものづくりの技術を社会貢献に役立てることができれば、積極的に協力したいとも思っていました。私自身、大田区生まれ大田区育ちなので、大田のものづくりを提供できればいいなと思い、参加しました。

Q 競技用車いすの開発で苦労したこと、大変だったことはどんなことです
A 当社は、金属切削の会社で、今回のプロジェクトでは、キャスターやジョイント(フレーム同士を留める金具)の金属の加工などに携わっています。 キャスターは、株式会社カセダさんが綿密な強度計算などをされて、設計していらっしゃるので、回転や色々な方向から負荷がかかっても、耐えられる構造になっています。 今回のプロジェクトは、軽量化が目的のひとつだったので、側面に穴があったり、少し斜めだったり、今までやったことがない形でした。そのため、最初に設計図を見たときは、戸惑いました。 金属を削るといっても、どのように削るか順番をよく考えないと削れないので、担当する社員は色々考えたと思います。 ものづくりは技術だけでなく、できるだけ早く効率的に作業を進めていくことも大事です。 当社では、毎日違うものを作っているので、担当する社員の技術力も日々上がっていると思います。

Q この開発に携わって嬉しかったことを教えてください 
A 作ったものを実際に使って、選手が試合に出ているのを見たことですね。

 この開発では、NO EXCUSEという車いすバスケットボールチームに何度か試乗をしてもらって、部品の出来や使い心地などを評価してもらいました。それで、チームの何人かの選手が自分たちの製作したキャスターなどを使ってくれていました。なかなか、自分たちが作ったものを使っているのを見ることはないので、それが嬉しかったですね。

Q これからの目標を教えてください
A 最近も大田区産業振興協会から、別途福祉用具開発の相談を受けました。

 相談を受けた福祉用具はこれまで限られた企業のみが携わっていました。そこへ大田区のものづくりに携わる様々な業種の企業が加わることで、新たなアイディアや技術が生まれることが期待されています。実際に、実物を見せてもらいながら、それぞれ持っている技術を持ち寄ると、色々なアイディアが出ました。今後も、それぞれの技術が生かせたらいいなと思います。

 また、福祉用具だけでなく、介護用具など、これまで踏み込んでいなかった業界などでも、培ってきた技術の転用や応用ができるならいかしていきたいと思っています。