大田区公民連携基本指針
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更新日:2022年1月14日
区はこれまで、大田区基本構想に掲げる「地域力」と「国際都市」の考え方に基づき、自治会・町会、各種団体、NPOなど地域の様々な主体と連携・協働を進めてきました。
平成27年に国連で採択された持続可能な開発目標SDGsなどを背景として、近年、民間企業等が社会課題の解決に向け行政と連携するという気運が高まっています。
これらを踏まえ区は、民間企業等との連携を一層推進して地域力をさらに強化し、持続可能なまちづくりを進めていくため、区と民間企業等との連携に係る区の基本的な考え方を示した「大田区公民連携基本指針」を策定しました。
大田区公民連携基本指針(令和4年1月版)
大田区の公民連携がめざすもの ~強みを掛け合わせ、大田区をフィールドに新たな価値を生み出す~
公民連携(Public-Private Partnership)とは、行政と民間企業等が協働で公共サービスの提供などを行うことをいいます。不確実性の時代において、公と民のそれぞれが持つ強みを活かし、未来を切り拓いていく手法です。
ワンストップ窓口 “大田区公民連携デスク” ~民間企業等と大田区をつなぎ、三方良しの取り組みを実現させる~
大田区公民連携デスクは、区内における公民連携の旗振り役として、民間企業等からの提案や相談を一元的に受け付ける窓口です。民間企業等の提案と庁内事業部局をマッチングし、双方の強みが十分に発揮され区民・民間企業等・行政の「三方良し」が実現する取り組みのストーリーを、共に考え、伴走する役目を担います。
目次
1 背景
(1)大田区におけるこれまでの取り組み
ア 大田区の基本的な方向性
大田区は、平成20(2008)年に、まちづくりの最も基本となる方針を示した「大田区基本構想(以下「基本構想」という。)」を策定し、区の将来像「地域力が区民の暮らしを支え、未来へ躍動する国際都市 おおた」を掲げました。
「地域力」の定義を、「区民一人ひとりの力を源として、自治会・町会、事業者、団体・NPOなど様々な主体が持っている力、それら相互及び区との連携・協働によって生まれる力を含んだものであり、防犯・防災、福祉、子育て、教育、産業、環境、国際交流、まちの魅力づくりなど、多様な地域の課題を解決し、魅力ある地域を創造していく力」とし、民間企業を含む地域の多様な主体の力を活用し、また、それらと連携して地域課題を解決していくという方向性をめざしてきました。
また区は、24時間国際拠点空港である羽田空港を擁する自治体として、平成29(2017)年3月に「国際都市おおた」を宣言しました。宣言では、地域の力を結集し、新たな時代を切り拓いて、世界にはばたくという方向性を示しています。
イ 公民連携に関するこれまでの取り組み
区はこれまで、基本構想で掲げた「地域力」と「国際都市」を区政運営のキーワードとして、様々な主体と連携した取り組みを推進してきました。自治会・町会や、団体・NPOなどとは、各種連携・協働事業を着実に実施し、地域の課題解決を共に進めています。併せて、区内の大学等の学術機関や他の自治体、公共機関などとの連携も幅広く展開し、地域力の土台をより強固なものにしてきました。
民間企業等についても、契約等の手続きに則り、企業等の有するノウハウを活用する形での連携を着実に進めてきました。窓口業務の委託や指定管理者制度を活用した施設管理などの取り組みがこちらに該当します。さらに近年では、一層の区民サービスの向上をめざし、個々の行政分野における協定の締結や、幅広い行政分野において包括連携協定(注釈1)を締結するといった、対等かつ互恵的な関係にもとづく手法を活用することで創造性に富んだ取り組みを進めています。
超高齢社会の到来、個人の価値観の多様化、加速度的に進展する情報化社会、さらには未曽有の災害がもたらす危機的状況など、社会の複雑性が増す中で地域課題解決はより一層困難さの度合いを高めています。区は、この変化に柔軟に対応し、持続可能なまちづくりを実現するため、民間企業等とも積極的に連携していくことにより、これまで培ってきた各種団体や学術機関等との連携・協働の仕組みとの相乗効果を生み出すことが求められています。
(注釈1)区と民間企業等による連携事業が、個別の行政分野に留まらない場合に採用を検討する手法。協定締結後、連携事業を実施する際には、法令及び区が定める各種規程・ガイドライン等に従うことは、後述のとおり。
(2)社会課題の解決に向けた連携気運の高まり
平成27(2015)年9月、国連において、先進国を含む国際社会全体の普遍的な目標である「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その中に持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)として17のゴール(目標)と169のターゲットが掲げられました。このアジェンダには「政府、国会、国連システム、国際機関、地方政府、先住民、市民社会、ビジネス・民間セクター、科学者・学会、そして全ての人々を取り込んでいくものである」と記され、全ての人々がこのアジェンダに関与していくことが求められています。
国は、平成28(2016)年5月に「SDGs推進本部」を設置し、同年12月には「SDGs実施指針」を策定しました。指針には、民間企業の位置づけとして「SDGsの達成のためには、公的セクターのみならず、民間セクターが公的課題の解決に貢献することが決定的に重要であり、民間企業(個人事業者も含む)が有する資金や技術を社会課題の解決に効果的に役立てていくことはSDGsの達成に向けた鍵でもある。」と記載されています。
SDGsという国際社会全体で課題解決へ向かう目標に対し、民間企業等は従来の社会貢献活動である CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)だけでなく、本業を通じて社会的課題の解決に取り組むことで、事業機会を生み出し経済的利益につなげるCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の手法でSDGsに貢献しようとする大きな潮流が生まれています。
行政はこの動向に着目し、SDGsの目標17にも掲げられているパートナーシップの力を最大限に生かす公民連携を進めていくことが、社会課題解決のための鍵といえます。
(3)国における公民連携の動向
国が策定する「経済財政運営と改革の基本方針」や「未来投資戦略」では、ハード・ソフトを問わず、幅広い行政分野において官と民との連携を推進する方向性が記載されています。
また、内閣府・総務省・国土交通省は、PPP導入の加速的推進を目的とし、平成28(2016)年に「PPP事業における官民対話・事業者選定プロセスに関する運用ガイド」を策定しました。当該ガイドでは、民間との連携を進める上での手順や留意事項が示されており、行政が地域課題を把握した上で必要な情報提供を行うことや、対話を実施することの重要性、提案を円滑に受け付ける窓口の設置等が挙げられています。
2 本指針の位置づけ
平成16(2004)年に策定した「大田区区民活動との連携・協働に係る基本方針」では、企業の役割を「企業は、地域社会の一員として、公共的課題の解決や幅の広い社会貢献活動に取り組む。」「企業は、区民活動団体、区の良きパートナーとして、お互いに成果を分かち合う協働を目指す。」とし、地域における企業の基本的な役割を定めています。
本指針は、近年の民間企業等の社会課題の解決に向けた連携気運の高まりを踏まえ、区と民間企業等との連携について、より具体的に定め、各種団体や学術機関等を含む地域の様々な主体による連携・協働を一層推進し、地域力のさらなる強化をめざすものです。
本指針は、区が行う公民連携に通じる基本的な考え方を示したものであり、区と連携パートナーとなる民間企業等(本指針が対象とする公民連携の「民」は、主に民間企業を意味することとします。また「連携」は、「協働」(注釈2)も含むものとします。)とが共有する羅針盤としての役割を果たします。
公民連携は常に時代に即した考え方のもと行われるべきものです。したがって、本指針は不断の見直しを行い、常に内容を改善していくこととします。
(注釈2)大田区区民協働推進条例における「協働」の規定は次のとおり。「区民活動団体、事業者及び区が豊かな地域社会を築くという共通の目的を持ち、相互に自主性を尊重しつつ、それぞれが有する知識、技術等の資源を提供し合い、協力し、及び連携して取り組むこと」
3 公民連携の理念
区が公民連携を推進するにあたり、全てに共通する理念は以下のとおりです。
(1)新たな可能性へのチャレンジ
社会状況が目まぐるしく変化し続ける時代において、同じ手法で同じ取り組みを続けていては、区民満足度を現状維持できず、低下させてしまう恐れがあります。地域課題を解決する手法は、これまで区が採用してきた手法が必ずしも全てではありません。「前例が無いからやらない」という姿勢ではなく、課題解決に向けた新たな可能性を柔軟に検討し「本当に実現したら面白い」という前向きな姿勢で公民連携に取り組みます。
(2)相乗効果の創出
区内には極めて多様な地域の主体が存在し、地域課題の解決に向け様々な活動をしています。民間企業等との連携を進めるにあたっては、区がこれまで培ってきた連携・協働の仕組みとの相乗効果を創出することをめざします。それぞれの主体が保有する知識・ノウハウ・資源を最大限に活かすことで「大田区ならでは」の相乗効果が生まれ、より効果的な地域課題の解決につながります。
(3)グローバルな視点の共有
区が日々行っている区民サービスを、より広い視点から捉えると、その1つ1つが何らかの形で国際社会の共通目標であるSDGsにつながっていると考えられます。区が公民連携を進める際には、国際社会の一員である区と民間企業等が、国際的な目標の実現のために連携して取り組むという視点を常に共有することとします。
4 公民連携の目的
区は、公民連携を推進することにより、「質の高い行政サービスの提供」、「地域課題の解決」、「地域の活性化」を実現し、区民(地域)、民間企業等、行政(区)のそれぞれにメリットがある「三方良し」の連携をめざします。
5 公民連携における原則
(1)課題と目標の共有の原則
公民連携を推進するにあたっては、区と連携パートナーの双方が課題と目標を正しく共有します。これが、公民連携の前提であり、第一歩となります。
(2)対話の原則
公共サービスの担い手である区と、利益の確保が求められる民間企業等では、基本的な立場の違いがあります。お互いが真摯に対話を重ね、信頼関係を構築していくことにより、公民連携の目的を実現します。
(3)公平性・透明性の確保の原則
行政は常に公平性・透明性の確保が求められ、これは公民連携を進める際も同様です。区は、広く連携の提案を受付けるとともに、公民連携の各段階において、公平性・透明性を確保します。
(4)アイデア保護の原則
公民連携を行うにあたっては、透明性の確保を基本としますが、事業検討段階における連携パートナーの独自アイデアは、保護すべき情報を協議の上、適切に保護します。
(5)役割分担及び責任の明確化の原則
区と連携する民間事業者等は、「公共」に加わり、その一部を担うことになります。公民連携を行うにあたっては、様々な社会的・経済的リスクを想定した上で、その範囲と責任について合意し、明確化することにより、事業の安定性を確保します。
6 連携協定による公民連携のプロセス
ここでは、連携協定による公民連携の基本的なプロセスを示します。なお、法令に基づき民間企業等と契約等を締結して進める公民連携(公募、入札等)は、当該法令及び区が定める各種規程、ガイドライン等に従います。
構想段階
(1)課題の把握
公民連携の最初のステップは、地域課題の的確な把握です。
地域が抱える課題には、過去から継続しているものもあれば、新たに発生するものもあります。区にとって現時点における課題、あるいは将来発生する課題は何かを常に把握・検討し、整理しておく必要があります。
地域課題を把握するとともに、区が活用し得る行政資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)についても確認します。
また、地域課題の解決につながる民間サービスの有無や、他自治体等おいて民間サービスを活用している先行事例も可能な限り調査します。
対話段階
(2)民間との対話
区は、公民連携にあたって対話を重視します。
区が自ら解決方法を模索することに加え、外部との情報共有を積極的に行い、民間企業等から地域課題の解決に向けたアイデアを受付けます。
そのうえで、地域課題の最適な解決方法を見つけるため、なるべく多くの方法を比較・検討します。
(ア)情報の公開
区が考える地域課題は、課題と判断した根拠、関連データ等を含め、行政計画等により幅広く公表します。また、区の現状に関するデータを可能な限り公開することにより、民間企業等の視点からの課題抽出や、解決策の提案につなげます。ただし、個人情報等、各種法令等に基づき区が保護すべき情報は除きます。
(イ)提案受付
民間企業等の視点から見た地域課題や、その解決に向けたアイデアを受付けます。
この際、提案を受付ける区の窓口を明確化します。(「ワンストップ窓口 “大田区公民連携デスク”」参照)
地域課題を十分に理解し、その解決に向けた提案であれば、区は、提案主体を区別することなく、幅広く受け付けます(単に営業を目的とする提案等は除きます)。
なお区は、提案を受付けるだけでなく、民間企業等との連携が効果的と見込まれる課題を区側から発信していくこともあります。
(ウ)対話の実施
民間企業等から提案を受けたアイデアについて、区と民間企業による対話を行います。
そのアイデアが地域課題の解決にどのように効果的なのかや、他の手法と比較してどの点で優位性があるかなどについて、対話により確認します。必要に応じて、類似するサービスを提供する他の民間企業等からヒアリングを実施します。
また、対話を通じて、当該民間企業等の社会課題の解決に対する基本的な考え方など、公共意識(パブリックマインド)を確認します。
(エ)比較検討
民間企業等から提案された様々なアイデアと、別途調査した区が活用し得る行政資源、民間サービスの事例等を比較検討します。
比較にあたっては、区民サービスの向上の視点、コスト(事業費および人件費)の視点から検討し、地域課題の解決方法を判断します。
この際、法令上の規制を確認する等、その実現可能性を見極めます。仮に、規制により現行制度では実現が不可能な場合であっても、真に必要な取り組みであれば、規制緩和を国や都に働きかける等、実現に向けた検討を行います。
必要に応じて、対話(上記(ウ))と、この比較検討作業を繰り返します。
連携段階
(3)パートナー決定(連携協定等の締結)
民間企業等との連携が、地域課題の解決に有効であると判断した場合、包括連携協定や個別協定等の締結により連携パートナーを決定します。パートナーの決定にあたり、区は公平性・透明性を確保する仕組みづくりについて検討します。
協定等の締結の際には、相手方となる民間企業等との中長期的な連携を前提とするため、その目的について十分な検討を行い、明確にしておくとともに、締結後、連携協定等を効果的に運用するための具体的な仕組みを担保します。
また、区が連携協定等を締結した際には、透明性を確保する観点から積極的に公表します。
(注釈)協定等の内容変更条件、有効期間等の明確化
公民連携に係る協定等を締結する際には、あらかじめ、内容を見直す条件を明確にするとともに、連携の有効期間を設定する等、状況の変化に対応できるように留意します。
(4)連携実施
協定書等に基づき、地域課題の解決に向けた公民連携事業を実施します。
なお、連携事業の実施にあたり必要となる具体的な取り決め等については、法令及び区が定める各種規程・ガイドライン等に従います。
(5)連携のチェック
地域課題の解決に向けた取り組みの進展や、社会経済情勢等により、公民連携の前提が変化する場合も考えられます。
これらの変化に柔軟に対応し、質の高い公共サービスを継続的に提供するために、定期的なモニタリングを実施します。公民連携の成果について、適切な期間を定めて客観的な方法で検証し、必要に応じて見直しを行うことで、常に連携事業の最適化を図ります。
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大田区公民連携基本指針(令和4年1月版)(PDF:1,863KB)
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